Key Takeaways
- TrendAI™ Researchは、2026年に公開されるAI関連CVEが2,800~3,600件に達すると予測しています。これは2025年に公開された2,130件から31~69%の増加です。AIはまったく新しいセキュリティ問題を生み出すというより、認証なしでの公開、パッチ未適用のソフトウェア、不十分なシークレット管理、信頼関係の悪用といった従来からある問題を増幅させています。
- ランサムウェアグループ「Qilin」は、2024年にはほとんど活動が見られなかったものの、2025年には1,262件の侵害が確認され、最も活発なグループとなりました。同時に、ランサムウェアの自律化も進んでいます。
- 中国、イラン、北朝鮮、ロシアとの関連が疑われるグループは、重要インフラのOT環境に足場を築きつつあります。
- 公共部門のCISOが最も大きな成果を得るには、既存のセキュリティ対策を実際の運用に落とし込み、事後対応型の検知から予防的な防御へ移行することが重要です。
私はサイバーセキュリティに30年間携わり、20年前ならSFのように思えた形で脅威ランドスケープが進化する様子を見てきました。しかし、現在AIと自律型システムをめぐって起きている変化は、これまでとは根本的に異なります。AIは、攻撃者が新たに採用した単なるツールではありません。攻撃の構想、実行、規模拡大のあり方そのものを変える増幅要因となっています。
重要インフラ、政府ネットワーク、教育機関のキャンパスを守る立場にあるCISOやセキュリティリーダーには、ぜひ読んでいただきたい内容です。今日の脅威ランドスケープに対応するには、新たな発想が求められます。本ブログ記事では、現在の状況と今後注力すべき領域について、TrendAI™のリサーチから得られた知見を紹介します。さらに詳しく知りたい方は、Deep Researchのページで各種リサーチを、TrendAI Security Blogで最新のブログ記事をご覧いただけます。
AIはサイバー脅威の状況をどのように変えているのか
現在、サイバー脅威の「AI化」が進んでいます。攻撃はこれまで以上に高速化・自動化され、巧みに連携して実行されるようになっています。国家主体は、これまで確認された以上に多くの侵入ライフサイクルの段階でAIを利用しています。中国との関連が疑われる攻撃者は生成AIを活用し、エクスプロイトを改良しながら、手作業では到底及ばない速度でマルウェアの開発を繰り返しています。もはや理論上の懸念ではなく、今まさに起きている現実です。
2026年のセキュリティ予測レポート「法人セキュリティ脅威予測2026」では、現場で実際に何が起きているのかを詳しく解説しています。長年にわたり脅威を追跡してきた私が特に懸念しているのは、自律型攻撃がすでに出現していることです。AIエージェントが、最初の侵入からデータの破壊まで、ランサムウェア攻撃の全工程を最小限の人間の監督だけで実行した事例が確認されています。これはもはや予測ではありません。今すぐ防御が必要な現実の脅威です。
AIの脆弱性はどれほどの速度で増加しているのか
政府部門のすべてのCISOが重く受け止めるべき予測があります。2026年だけで、AI関連のCVE(Common Vulnerabilities and Exposures:共通脆弱性識別子)が2,800~3,600件に達する見込みです。これは2025年の2,130件から31~69%の増加に相当します。この数値は、2025年のAIセキュリティをまとめたレポート「TrendAI™ AIセキュリティレポート2026 ~AIエコシステムの断層~」に基づいています。同レポートでは33万件を超えるCVEを分析し、2018~2025年に公開された脆弱性のうち、AIシステムに直接影響するものを6,000件以上特定しました。増加の背景には、エージェント型システムの急速な導入、大規模言語モデル(LLM)の拡大、そして重要なAIインフラがセキュリティを前提に設計されないまま公開され続けていることがあります。
問題は件数だけではありません。AIシステムの導入速度が、セキュリティチームによる評価の速度を上回る複雑なエコシステムの中で、組織は運用を迫られています。2026年上半期のAIセキュリティをまとめたレポート「2026年上半期AIセキュリティレポート ~ 高速化と大規模化に潜む代償 ~」が示すように、AIはまったく新しい種類の脅威を生み出しているわけではなく、従来の脅威を増幅させています。認証なしでの公開、パッチ未適用のソフトウェア、不十分なシークレット管理、信頼関係の悪用といった問題が、今や機械処理の速度で進行し、攻撃者に悪用されています。導入の速度とセキュリティ成熟度の間には明確な隔たりがあり、その隔たり自体が攻撃対象となっています。
セキュリティ上の真の課題が運用への落とし込みにある理由
脅威リサーチを通じて一貫した傾向が見えてきました。政府機関のセキュリティリーダーにぜひ知っていただきたいのは、防御に必要な技術がないことが本質的な問題ではないという点です。すでにある技術を実際の運用に落とし込めていないことこそが問題です。
最適な設定を適用する機能を十分に備えたセキュリティソリューションでも、設定ミスが残されています。アカウントのライフサイクル管理を自動化できるプラットフォームでも、アイデンティティに関するリスクが蓄積しています。深刻度の高い攻撃につながることが実証されているにもかかわらず、中程度の深刻度のCVEが後回しにされるケースもあります。これは新たな技術を生み出せないことではなく、実行上の問題です。
「TrendAI™ 2026 サイバーリスクレポート」では、この運用上の隔たりを詳しく分析しています。特に政府部門は、レガシーシステム、変更管理プロセス、リソースの制約といった固有の課題を抱えており、セキュリティ対策を一貫して運用することが一層難しくなっています。一方で、こうした領域に取り組むことは、防御面で最も高い効果をもたらします。
ランサムウェアはどのように自律化しているのか
「Qilin(別名Agenda)」のようなランサムウェアグループが急速に台頭しています。TrendAI™ 2026 Cyber Risk Reportによると、Qilinは2024年にはほとんど活動が見られませんでしたが、2025年には1,262件の侵害が確認され、1,270%増で首位となりました。
懸念すべきなのは件数だけではありません。2026年を通じてランサムウェアの自律化が一層進み、AIによって脆弱性の悪用、窃取したデータの分析、さらには被害者との交渉まで自動化される見込みです。
これがインシデント対応手順にどのような影響を与えるかを考える必要があります。交渉相手はもはや人間とは限りません。法務部門や運用部門よりも速く状況に適応できる自動化システムを相手にすることになります。従来とはまったく異なる対応が必要です。
こうした傾向と、重要インフラや政府ネットワークへの具体的な影響についてさらに詳しく知りたい方には、「TrendAIとNVIDIA OpenShellによる自律型AIエージェントのセキュリティ強化」をお勧めします。このリサーチでは、自律型攻撃を防御するための実践的なアプローチを解説しています。
重要インフラがAI駆動型攻撃の主要な標的となる理由
公共部門のセキュリティリーダーにとって最も影響が大きい領域の一つが、重要インフラです。電力網、水道システム、交通ネットワーク、病院は、AIによって高度化した新世代の脅威にとって主要な標的となっています。最新レポート「産業インフラを脅かすもの:フロンティアAIが変えるリスクの構図」は、AIによって、かつては数週間あった警戒の猶予が数時間にまで短縮されている実態を示しています。これは抽象的な話ではありません。米国の重要インフラでは、水道事業者を含む75台以上のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)が侵害され、ポーランドでは30か所を超える再生可能エネルギー施設がマルウェア「DynoWiper」の被害を受けています。
特に懸念しているのは、攻撃に向けた準備がすでに進められていることです。中国、イラン、北朝鮮、ロシアとの関連が疑われるAPT(Advanced Persistent Threat)グループは、将来利用できる持続的なアクセスを確立するため、オペレーショナルテクノロジー(OT)環境を積極的に調査しています。同時に、OTネットワークとITネットワークの融合は、未管理の露出を生む最大の要因となっていますが、多くの事業者はいまだに接続されている機器の全体像を把握できていません。さらに、需要のピーク時に変電所を停止することはできず、病院の医療機器ネットワークも簡単にはオフラインにできません。その結果、こうした環境では脆弱なソフトウェアが何年にもわたって稼働し続けます。
では、どこから着手すべきでしょうか。レポートでは8つの推奨事項を提示しています。そのうち、すべての政府機関と事業者に今すぐ取り組んでいただきたい上位3項目は、攻撃者に把握される前にOT資産の完全なインベントリを作成すること、仮想パッチを一時的な措置ではなく脆弱性管理の恒久的な一部として扱うこと、そして検知と並行して迅速な封じ込めを優先することです。EUのネットワークおよび情報システム指令2(NIS2)のような規制はセキュリティの基準を引き上げていますが、コンプライアンス対応だけでは必要な時期までに隔たりを埋められません。官民のインテリジェンス共有を強化することも同じくらい重要です。政府が単独で把握するよりも早く、民間部門のテレメトリが脅威を捉えている場合が多いためです。
政府機関は事後対応型から予防型の防御へどのように移行すべきか
政府機関や公共部門(連邦、州、地方自治体の各機関)が従来採用してきたサイバーセキュリティのアプローチには、中核的な課題があります。これまでの対策は事後対応型でした。壁を築き、センサーを導入し、侵入を検知してから対応するというものです。しかし、このモデルは通用しなくなりつつあります。
攻撃者がAIによって攻撃サイクルを短縮し、作戦を自動化している状況では、検知されるまで待つ余裕はありません。自律型攻撃への防御では、既知の侵害指標を遮断するだけでなく、振る舞いを理解して検知することが重要になります。問うべきことも、「攻撃を受けているとどう判断するか」から「攻撃を最初から成功させないために何をすべきか」へ変わります。
TrendAI™は、この領域にリサーチとプラットフォーム開発の重点を置いています。必要な変化は考え方だけでなく、アーキテクチャにも及びます。攻撃が組織の境界に到達する前に予測し、先回りして防止できるセキュリティモデルへの移行を進めています。そのためには、攻撃者が実際に動く前に、その目的、ツール、攻撃手法、次に取り得る行動を理解する必要があります。
「戦力を増幅するAI:2026年脅威インテリジェンスフォーラムからの示唆」と「RSAC 2026におけるTrendAI™ Research:AI主導およびサイバーフィジカル脅威への防御の高度化」は、いずれもこの変化を取り上げています。今後の脅威ランドスケープに対応できるのは、自らのAIと自動化の能力を活用し、攻撃者側に傾いた非対称性を自組織に有利な方向へ戻せる組織です。
公共部門のCISOがこのリサーチを読むべき理由
明確にお伝えしたいことがあります。TrendAI™がこのリサーチに取り組むのは、重要インフラを保護し、政府機関の防御力強化を支援するという使命を重視しているからです。38年にわたり、デジタル情報を安全にやり取りできる世界の実現を使命としてきました。これはマーケティングのための主張ではありません。テレメトリ、インシデント対応業務、そして皆さまのような組織とのパートナーシップから得た、現場の事実です。
リサーチは、脅威ランドスケープがどこへ向かっているかを示します。何を優先し、どこにリソースを投入し、機械処理の速度で進む脅威に対応するためにセキュリティ態勢をどう変えるべきかを明らかにします。エンタープライズネットワーク、重要インフラ、機密性の高い政府システムのいずれを管理している場合でも、AI駆動型の脅威と自律型攻撃の能力を理解することは、もはや不可欠です。
今すぐ行動し、事後対応型の検知から予防型の防御への移行に投資し、既存のセキュリティ機能を実際の運用に落とし込む組織は、より安心して夜を迎えられるでしょう。対応を先延ばしにする組織は、ますます脅威に追いつけなくなります。
ぜひ最新のリサーチをお読みください。レポートを読み、データを検証し、自組織とその脅威モデルにどのような意味を持つのかを考えてみてください。脅威が所属する機関や分野に及ぼす具体的な影響について話し合いたい場合は、ぜひご連絡ください。政府、教育、重要インフラの各分野のパートナーと、今まさに話し合うべきテーマです。
AI駆動型の脅威や自律型攻撃について、皆さまは何を最も懸念していますか。ぜひご意見をお聞かせください。XまたはLinkedInから私にご連絡いただくか、セキュリティ態勢の強化について脅威インテリジェンスチームまでお問い合わせください。
それでは、引き続きネットワークの安全確保に努めてください。
著者について
Jon Clayは、TrendAI™で脅威インテリジェンス担当バイスプレジデントを務めています。1996年にセールスエンジニアとして入社して以来、30年にわたりサイバーセキュリティに携わってきました。脅威ランドスケープの変化を追跡し、脅威リサーチの成果をセキュリティリーダーが実践できる指針へと落とし込んでいます。
参考記事:
AI and the Evolving Threat Landscape: What Public Sector CISOs Need to Know Now
By: Jon Clay, VP of Threat Intelligence, TrendAI™
翻訳:与那城 務(Platform Marketing, TrendAI™ Research)